二重根号
数学の問題を解いていると,ときどき のように
ルートの中にルートの数があるような数に出くわすことがあります。
このような数の表記を二重根号と呼ぶことがあるのですが
二重根号で表された数の一部はその形を回避することができます。
本記事ではその手法について例題とともに解説します。
Step1
以下の内容を理解する上でとくに重要なことは
平方根における次の性質です。
上のような式で見ると難しく見えるかもしれませんが
実際は次の例のようなよくある計算です。
(例1):
(例2):
のときは上の(例1),(例2)のようになります。
乗して になる数で正のものを と表すのですから
は 乗して になる数で正のもの,すなわち である
というのは,当たり前です。
ただし次の例のように, のときは注意が必要です。
(例3):
(例4):
一見すると,当たり前の計算と思うかもしれません。
しかし, は正しいですが は正しくないですよね。
負の数の平方根は実数範囲では存在しないので
で表された数が負の数になってはまずいのです。
これら(例3),(例4)が先に述べた平方根の性質における2行目の式
『 のとき 』 の例となります。
というわけです。
注意すべきこと
のとき
上の式において,“見た目のイメージ”から を負の数だと思わないこと。
そもそも とことわっているので は正の数である。
例題1の解答
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
Step2
次は,いよいよ二重根号について考えていきましょう。
と言っても,先ほどまで考えてきた性質を応用するだけです。
(例5):
なので
です。
(例6):
なので
です。
(例5),(例6)のように,要はルートの中身が の形になれば良いのです。
なぜなら既に述べたように, のとき だからです。
では,どのようなときにルートの中身が の形にできるでしょうか。
次に述べるのは,そのうち簡単なもののひとつです。
(ただし ) の形の二重根号について考えます。
とします。
ですから
であるときに
のように二重根号を避けることができます。
つまり,足して ,かけて になる2つの数 を見つければ良いのです。
このことを踏まえてもう一度(例5),(例6)の式を見てみましょう。
(例5):
を見て,足して ,かけて になる2数は と ですから
であることがわかります。
(例6):
を見て,足して ,かけて になる2数は と ですから
であることがわかります。
しかし,次の例のような場合は注意が必要です。
(例7):
なので
です。
一方で でもありますが
とはなりません!
なぜならば, は負の数だからです。
(これは であることから容易にわかります。)
としても とはしないように
の形で表記された数をルートを使わない形に直すときに負の数にはしません。
例題2
次のそれぞれの数について,二重根号でない形で表してください。
(1)
(2)
(3)
例題2の解答
(1)
(2)
(3)
Step3
もう少し難しいものを考えてみましょう。
(例8):
は の形になって…いないように見えるだけで
と変形できます。
(例9):
はさすがにどうにもできない…と思ったら
と変形できます。
(2つめの『』で,ルートの中身の分母・分子に2をかけました。)
最後の有理化は,ご自由に。
皆さんも挑戦してみましょう。
例題3
次のそれぞれの数について,二重根号でない形で表してください。
(1)
(2)
(3)
(4)
例題3の解答
(1)
(2)
(3)
(4)
(4)についてもう少し詳しく
補足
二重根号を直す操作は,例えばマーク式の試験で必要になることがあります。
ある問題について自分で計算した結果が二重根号の形になったが
解答欄を見ると二重根号の形になっていない,ということがあった場合
これは二重根号の形を回避できることがわかります。
ところで二重根号で表された数は,全てがその形を避けられるとは限りません。
たとえば について考えてみます。
Step2で述べたことから,足して ,かけて になる2数を見つけたいです。
このような2数を見つけることは,2次方程式 を解くのと同じです。
ところがこの方程式の判別式を とすると
となり,実数解がありません。
そういうわけで はこの形のまま放っておくしかありません。
二重根号で表された数をそうでない形に直すことができるかどうかというのは
どちらかと言えば些末な問題で
より大事なことは,例えば計算していて と出てきたときに
見た目に騙されて思考停止せず
これは何かよくわからんが 乗すると になる数である
という正しい認識をもち,その状態のまま計算を進められる力をつけることです。