平方完成
前提知識
平方完成をスムーズに理解するには
の形の式の展開がよくできると良いです。
の展開の様子を丁寧に書けば
\begin{align}
(x+a)^2 &= (x+a)(x+a)\\
&= x(x+a) + a(x+a)\\
&= x^2 +xa +ax +a^2\\
&= x^2 +2ax +a^2
\end{align}
ですが,最初の の形を見て,最後の行がすぐにわかる程度だと良いです。
例えば, を見て がすぐに思い浮かぶくらいです。
それがわかるようにするためには,式をよく観察しましょう。
最初と結果だけ書くと です。
右辺の第1項は ,第3項は で,それぞれ と の 乗です。
第2項は と の和ですから ( と の積の 倍)です。
同じことを で考えてみると
第1項は ,第3項は
第2項は ですから,結局
になる,という具合です。
というわけで,まずは式の展開の問題から始めます。
例題1
次の各式を展開してください。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
例題1の解答
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
では,いよいよ本題の平方完成に入ります。
レベル1
~ の係数が , の係数が偶数のとき~
平方完成
は実数で とします。
についての 次式 を,等式
\begin{align}
ax^2+bx+c = a(x-p)^2+q
\end{align}
の右辺の形に変形する操作を平方完成といいます。
といっても,言葉ではとてもわかりにくいと思うので,例を挙げましょう。
(例1):
の平方完成を,次のように考えます。
\begin{align}
& x^2 + 2x\\
&= x^2 + 2x + 1 - 1\\
&= (x+1)^2 -1
\end{align}
(1行目):最初の式。もし だと にできて嬉しい。
(ここを見破るのに の展開がよくできることが重要!)
(2行目):勝手に を足してはいけないので即座に同じ を引いて帳尻を合わせます。
(3行目):そして の部分だけ変形します。
これで平方完成の操作完了です。
このように 次式を,(次式)(定数項) の形に変形することを目指します。
次の例を挙げます。
(例2):
の平方完成を考えます。
\begin{align}
& x^2 - 8x + 1\\
&= x^2 - 8x + 16 - 16 + 1\\
&= (x-4)^2 - 16 + 1\\
&= (x-4)^2 -15
\end{align}
(1行目):もし だと にできて嬉しい。
(2行目):勝手に を足してはいけないので即座に を引いて帳尻を合わせます。
は特に気にせず置いておきましょう。
(3行目): の部分だけ変形します。
(4行目):定数項の部分を計算しました。
このように定数項はおまけだと思って, 次の項と 次の項に注目しましょう。
また上記の例1,例2の(2行目)のように
ある数を足して即座に同じ数を引くという部分について
突然都合の良い数がでてきた!と思ったり
そんな変形して良いの?と思う方もいるかもしれません。
しかし ですから,この変形は実質 を足しているだけで
つまり値を一切変えていないので,正しい変形なのです。
例題2
次の式を平方完成してください。
(1)
(2)
(3) ( は実数)
例題2の解答
(1)
(2)
(3)
レベル2
~ の係数が , の係数が偶数以外~
ここから少し難しくなります。
(例3):
\begin{align}
& x^2 + 3x\\
&= x^2 + 3x + \frac{9}{4} - \frac{9}{4}\\
&= \left( x+\frac{3}{2} \right) ^2 - \frac{9}{4}
\end{align}
やることは,例1や例2と変わりません。
ただし を見つけるのがやや難しいです。
次のように考えると良いです。
の形を作ることを考えたいので
の式と
(平方完成すべき式)を見比べます。
の係数はいずれも です。
の係数について と が対応する(等しい)と考えると
すなわち であれば良いとわかります。
ならば ですから
を足して,すぐに引けば良いとわかります。(例3の2行目)
(例4):
\begin{align}
& x^2 - \frac{2}{3}x + 1\\
&= x^2 - \frac{2}{3}x + \frac{1}{9} - \frac{1}{9} + 1\\
&= \left( x-\frac{1}{3} \right)^2 - \frac{1}{9} + \frac{9}{9}\\
&= \left( x-\frac{1}{3} \right)^2 + \frac{8}{9}\\
\end{align}
(例5):
\begin{align}
& x^2 + kx - 2\\
&= x^2 + kx + \left( \frac{k}{2} \right)^2 - \left( \frac{k}{2} \right)^2 - 2\\
&= \left( x+\frac{k}{2} \right)^2 - \frac{k^2}{4} -2\\
&= \left( x+\frac{k}{2} \right)^2 - \frac{k^2}{4} -\frac{8}{4}\\
&= \left( x+\frac{k}{2} \right)^2 - \frac{k^2 + 8}{4}\\
\end{align}
(例3)のように
と
を見比べて
から を見破りましょう。
例題3
次の式を平方完成してください。
(1)
(2)
(3)
例題3の解答
(1)
(2)
(3)
レベル3
~ の係数が 以外のとき~
(例6):
\begin{align}
& 2x^2+8x+5\\
&= 2(x^2+4x)+5\\
&= 2(x^2+4x+4-4)+5\\
&= 2 \{(x+2)^2 - 4 \}+5\\
&= 2(x+2)^2 - 8 + 5\\
&= 2(x+2)^2 -3
\end{align}
の係数で式の一部をくくって
かっこの中で平方完成の操作をしてしまえば良いです。
ここで,例6の2行目において定数項の までかっこでくくっても良いのですが
その場合計算ミスをしやすくなってしまうので,私は例6のようなやり方が好きです。
(とくに4行目から5行目において,中かっこ の前にある を
中かっこの中にある にかけるのを忘れるミスが多発しやすい!)
(例7):
\begin{align}
& -3x^2 + 4x - 1\\
&= -3 \left( x^2 - \frac{4}{3} \right) - 1\\
&= -3 \left( x^2 - \frac{4}{3}x + \frac{4}{9} - \frac{4}{9} \right) - 1\\
&= -3 \left\{ \left( x-\frac{2}{3} \right)^2 - \frac{4}{9} \right\} - 1\\
&= -3 \left( x-\frac{2}{3} \right)^2 + \frac{4}{3} - 1\\
&= -3 \left( x-\frac{2}{3} \right)^2 + \frac{1}{3}
\end{align}
くくった後で分数になっても気にしません。
(例8):
\begin{align}
& \frac{1}{2}x^2 + 3x\\
&= \frac{1}{2}(x^2+6x)\\
&= \frac{1}{2}(x^2+6x+9-9)\\
&= \frac{1}{2} \{ (x+3)^2 - 9 \}\\
&= \frac{1}{2}(x+3)^2 - \frac{9}{2}
\end{align}
例8の2行目のように分数でくくるのが苦手な人は多い印象です。
私は, まで考えて
右辺を展開して左辺に戻るように の中を決める
と考えることが多いです。
他にも, の中身の式はもとの式を で割ったもの
と考えても良いでしょう。
(例9):( のとき)
\begin{align}
& kx^2- 5x +1\\
&= k \left( x^2 - \frac{5}{k}x \right) + 1\\
&= k \left( x^2 - \frac{5}{k}x + \frac{25}{4k^2} - \frac{25}{4k^2} \right) + 1\\
&= k \left\{ \left(x-\frac{5}{2k} \right)^2 - \frac{25}{4k^2} \right\} +1\\
&= k \left(x-\frac{5}{2k} \right)^2 - \frac{25}{4k} +1
\end{align}
文字でくくるのだってなんのその。
最後に定数項の部分をまとめるか否かは好みの問題です。
さあ、例題を出します。頑張りましょう。
例題4
次の式を平方完成してください。
(1)
(2)
(3)
(4) (ただし とします)
例題4の解答
(1)
(2)
(3)
(4)
最終問題
ここまでできたあなたなら,次の問題もきっとできるはず。
頑張ってください。
最終問題 (2次関数の一般形)
は実数で, とします。次の式を平方完成してください。
\begin{align}
ax^2 + bx + c
\end{align}
最終問題の解答
\begin{align}
ax^2 + bx + c = a \left( x+\frac{b}{2a} \right)^2 - \frac{b^2 - 4ac}{4a}
\end{align}
補足
とくに高校数学では平方完成ができることはとても重要で
様々な場面で考えの手助けになります。
例えば高校範囲で習う例では
・2次方程式の解を求める
・2次関数のグラフの頂点を求める
・不等式を証明する
など(もちろん他にも)があります。