ぬうがくブログ

数学っぽいことを気になったときに気になったように書き綴ります。たまに別の趣味と混ざります。

平方完成

 

 

 

前提知識

平方完成をスムーズに理解するには
(x+a)^2 の形の式の展開がよくできると良いです。
(x+a)^2 の展開の様子を丁寧に書けば
\begin{align}
(x+a)^2 &= (x+a)(x+a)\\
&= x(x+a) + a(x+a)\\
&= x^2 +xa +ax +a^2\\
&= x^2 +2ax +a^2
\end{align}
ですが,最初の (x+a)^2 の形を見て,最後の行がすぐにわかる程度だと良いです。
例えば,\left(x+\displaystyle\frac{1}{2} \right) ^2 を見て x^2 +x +\displaystyle\frac{1}{4} がすぐに思い浮かぶくらいです。

それがわかるようにするためには,式をよく観察しましょう。
最初と結果だけ書くと (x+a)^2 = x^2 +2ax + a^2 です。
右辺の第1項は x^2,第3項は a^2 で,それぞれ xa2 乗です。
第2項は xaax の和ですから 2ax (xa の積の 2 倍)です。

同じことを \left( x+\displaystyle\frac{1}{2} \right)^2 で考えてみると
第1項は x^2,第3項は \left( \displaystyle\frac{1}{2}\right)^2 = \displaystyle\frac{1}{4}
第2項は 2 \times x \times \displaystyle\frac{1}{2} = x ですから,結局
\left(x+\displaystyle\frac{1}{2} \right) ^2 = x^2 +x + \displaystyle\frac{1}{4} になる,という具合です。

というわけで,まずは式の展開の問題から始めます。

例題1

次の各式を展開してください。

(1) (x+3)^2

(2) (x-10)^2

(3) \left( a + \displaystyle\frac{2}{3} \right)^2

(4) \left( y - \displaystyle\frac{5}{4} \right)^2

(5) \left( x + \displaystyle\frac{5}{6} a \right)^2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例題1の解答

(1) (x+3)^2 = x^2 + 6x + 9

(2) (x-10)^2 = x^2 - 20x + 100

(3) \left( x + \displaystyle\frac{2}{3} \right)^2 = x^2 +\displaystyle\frac{4}{3}x + \displaystyle\frac{4}{9}

(4) \left( x - \displaystyle\frac{5}{4} \right)^2 = x^2 - \displaystyle\frac{5}{2}x + \displaystyle\frac{25}{16}

(5) \left( x + \displaystyle\frac{5}{6} a \right)^2 = x^2 + \displaystyle\frac{5}{3}a + \displaystyle\frac{25}{36}a^2

 

では,いよいよ本題の平方完成に入ります。

 


 

レベル1

x^2 の係数が 1x の係数が偶数のとき~

 

平方完成

a,b,c,p,q は実数で a \neq 0 とします。

x についての 2 次式 ax^2+bx+c を,等式
\begin{align}
ax^2+bx+c = a(x-p)^2+q
\end{align}
の右辺の形に変形する操作を平方完成といいます。

 

といっても,言葉ではとてもわかりにくいと思うので,例を挙げましょう。

(例1):
x^2+2x の平方完成を,次のように考えます。
\begin{align}
&  x^2 + 2x\\
&= x^2 + 2x + 1 - 1\\
&= (x+1)^2 -1
\end{align}
(1行目):最初の式。もし x^2+2x+1 だと x^2+2x+1 = (x+1)^2 にできて嬉しい。
    (ここを見破るのに (x+a)^2 の展開がよくできることが重要!)
(2行目):勝手に 1 を足してはいけないので即座に同じ 1 を引いて帳尻を合わせます。
(3行目):そして x^2 + 2x +1 の部分だけ変形します。

これで平方完成の操作完了です。
このように 2次式を,(1次式){}^2 +(定数項) の形に変形することを目指します。

 

次の例を挙げます。

(例2):
x^2-8x+1 の平方完成を考えます。
\begin{align}
& x^2 - 8x + 1\\
&= x^2 - 8x + 16 - 16 + 1\\
&= (x-4)^2 - 16 + 1\\
&= (x-4)^2 -15
\end{align}
(1行目):もし x^2-8x+16 だと (x-4)^2 にできて嬉しい。
(2行目):勝手に 16 を足してはいけないので即座に 16 を引いて帳尻を合わせます。
    +1 は特に気にせず置いておきましょう。
(3行目):x^2 - 8x + 16 の部分だけ変形します。
(4行目):定数項の部分を計算しました。

このように定数項はおまけだと思って,2 次の項と 1 次の項に注目しましょう。

また上記の例1,例2の(2行目)のように
ある数を足して即座に同じ数を引くという部分について
突然都合の良い数がでてきた!と思ったり
そんな変形して良いの?と思う方もいるかもしれません。
しかし +a-a=0 ですから,この変形は実質 0 を足しているだけで
つまり値を一切変えていないので,正しい変形なのです。

 

例題2

次の式を平方完成してください。

(1) x^2 + 6x

(2) x^2 - 10x + 7

(3) x^2 + 4x + a (a は実数)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例題2の解答

(1) x^2 + 6x = (x+3)^2 -9

(2) x^2 - 10x + 7 = (x-5)^2 - 18

(3) x^2 + 4x + a = (x+2)^2 - 4 + a

 


 

レベル2

x^2 の係数が 1x の係数が偶数以外~

ここから少し難しくなります。

(例3):
\begin{align}
& x^2 + 3x\\
&= x^2 + 3x + \frac{9}{4} - \frac{9}{4}\\
&= \left( x+\frac{3}{2} \right) ^2 - \frac{9}{4}
\end{align}
やることは,例1や例2と変わりません。
ただし x^2 + 3x + \displaystyle\frac{9}{4} = \left( x+\frac{3}{2} \right)^2 を見つけるのがやや難しいです。

次のように考えると良いです。
(x+a)^2 の形を作ることを考えたいので
x^2 + 2ax + a^2 = (x+a)^2 の式と
x^2 + 3x (平方完成すべき式)を見比べます。

x^2 の係数はいずれも 1 です。
x の係数について 2a3 が対応する(等しい)と考えると
2a=3 すなわち a=\displaystyle\frac{3}{2} であれば良いとわかります。
a=\displaystyle\frac{3}{2} ならば a^2 = \displaystyle\frac{9}{4} ですから
\displaystyle\frac{9}{4} を足して,すぐに引けば良いとわかります。(例3の2行目)

 

(例4):
\begin{align}
& x^2 - \frac{2}{3}x + 1\\
&= x^2 - \frac{2}{3}x + \frac{1}{9} - \frac{1}{9} + 1\\
&= \left( x-\frac{1}{3} \right)^2 - \frac{1}{9} + \frac{9}{9}\\
&= \left( x-\frac{1}{3} \right)^2 + \frac{8}{9}\\
\end{align}

(例5):
\begin{align}
& x^2 + kx - 2\\
&= x^2 + kx + \left( \frac{k}{2} \right)^2 - \left( \frac{k}{2} \right)^2 - 2\\
&= \left( x+\frac{k}{2} \right)^2 - \frac{k^2}{4} -2\\
&= \left( x+\frac{k}{2} \right)^2 - \frac{k^2}{4} -\frac{8}{4}\\
&= \left( x+\frac{k}{2} \right)^2 - \frac{k^2 + 8}{4}\\
\end{align}
(例3)のように
x^2+2ax+a^2
x^2+kx を見比べて
2a=k から a=\displaystyle\frac{k}{2}を見破りましょう。

 

例題3

次の式を平方完成してください。

(1) x^2+5x+5

(2) x^2-\displaystyle\frac{1}{4}x+3

(3) x^2+3kx+1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例題3の解答

(1) x^2+5x+5 = (x+\displaystyle\frac{5}{2})^2 -\frac{5}{4}

(2) x^2-\displaystyle\frac{1}{4}x+3 = \left( x-\displaystyle\frac{1}{8}\right)^2 +\frac{191}{64}

(3) x^2+3kx+1 = \left( x+\displaystyle\frac{3}{2}k \right)^2-\displaystyle\frac{9k^2-4}{4}

 


 

レベル3

x^2 の係数が 1 以外のとき~

(例6):
\begin{align}
& 2x^2+8x+5\\
&= 2(x^2+4x)+5\\
&= 2(x^2+4x+4-4)+5\\
&= 2 \{(x+2)^2 - 4 \}+5\\
&= 2(x+2)^2 - 8 + 5\\
&= 2(x+2)^2 -3
\end{align}
x^2 の係数で式の一部をくくって
かっこの中で平方完成の操作をしてしまえば良いです。
ここで,例6の2行目において定数項の 5 までかっこでくくっても良いのですが
その場合計算ミスをしやすくなってしまうので,私は例6のようなやり方が好きです。
(とくに4行目から5行目において,中かっこ \{ \} の前にある 2
中かっこの中にある -4 にかけるのを忘れるミスが多発しやすい!)

(例7):
\begin{align}
& -3x^2 + 4x - 1\\
&= -3 \left( x^2 - \frac{4}{3} \right) - 1\\
&= -3 \left( x^2 - \frac{4}{3}x + \frac{4}{9} - \frac{4}{9} \right) - 1\\
&= -3 \left\{ \left( x-\frac{2}{3} \right)^2 - \frac{4}{9} \right\} - 1\\
&= -3 \left( x-\frac{2}{3} \right)^2 + \frac{4}{3} - 1\\
&= -3 \left( x-\frac{2}{3} \right)^2 + \frac{1}{3}
\end{align}

くくった後で分数になっても気にしません。

(例8):
\begin{align}
& \frac{1}{2}x^2 + 3x\\
&= \frac{1}{2}(x^2+6x)\\
&= \frac{1}{2}(x^2+6x+9-9)\\
&= \frac{1}{2} \{ (x+3)^2 - 9 \}\\
&= \frac{1}{2}(x+3)^2 - \frac{9}{2}
\end{align}

例8の2行目のように分数でくくるのが苦手な人は多い印象です。
私は,\displaystyle\frac{1}{2}x^2+3x =\frac{1}{2}(x^2+?x) まで考えて
右辺を展開して左辺に戻るように (   ) の中を決める
と考えることが多いです。
他にも,(   ) の中身の式はもとの式を \displaystyle\frac{1}{2} で割ったもの
と考えても良いでしょう。

(例9):(k \neq 0 のとき)
\begin{align}
& kx^2- 5x +1\\
&= k \left( x^2 - \frac{5}{k}x \right) + 1\\
&= k \left( x^2 - \frac{5}{k}x + \frac{25}{4k^2} - \frac{25}{4k^2} \right) + 1\\
&= k \left\{ \left(x-\frac{5}{2k} \right)^2 - \frac{25}{4k^2} \right\} +1\\
&= k \left(x-\frac{5}{2k} \right)^2 - \frac{25}{4k} +1
\end{align}
文字でくくるのだってなんのその。
最後に定数項の部分をまとめるか否かは好みの問題です。

さあ、例題を出します。頑張りましょう。

 

例題4

次の式を平方完成してください。

(1) 3x^2 + 12x - 10

(2) -2x^2 - 7x - 1

(3) \displaystyle\frac{2}{3}x^2 + 6x + 5

(4) kx^2 + 4x + 3 (ただし k \neq 0 とします)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例題4の解答

(1) 3x^2 + 12x - 10 = 3(x+2)^2 -22

(2) -2x^2 - 7x - 1 = -2 \left( x - \displaystyle\frac{7}{4} \right)^2 + \displaystyle\frac{41}{8}

(3) \displaystyle\frac{2}{3}x^2 + 4x + 5 = \displaystyle\frac{2}{3}(x+3)^2 -1

(4) kx^2 + 4x + 3 = k \left( x+\displaystyle\frac{2}{k} \right)^2 - \displaystyle\frac{4}{k} + 3

 


 

最終問題

ここまでできたあなたなら,次の問題もきっとできるはず。
頑張ってください。

 

最終問題 (2次関数の一般形)

a,b,c は実数で,a \neq 0 とします。次の式を平方完成してください。
\begin{align}
ax^2 + bx + c
\end{align}

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終問題の解答
\begin{align}
ax^2 + bx + c = a \left( x+\frac{b}{2a} \right)^2 - \frac{b^2 - 4ac}{4a}
\end{align}

 


補足 

とくに高校数学では平方完成ができることはとても重要で
様々な場面で考えの手助けになります。
例えば高校範囲で習う例では

2次方程式の解を求める
・2次関数のグラフの頂点を求める
・不等式を証明する

など(もちろん他にも)があります。