単位円による三角関数の定義
本記事では単位円を使った三角関数の定義について紹介し
またそれをもとに,三角関数の性質について解説します。
よりわかりやすい解説を目指し
第1象限の角,第2,第3,第4象限の角,というように
それぞれの場合について考えていきます。
定義
単位円による三角関数の定義
座標平面上に,原点 を中心とする半径 の円を描き
点 とします。
また円周上の任意の位置に点 をとり, とします。
このとき,点 の座標を, と表します。
また, の条件のもとで とします。
このページでは,上の図を【定義の図】と呼ぶことにし
以降,この図をアレンジしながらたびたび扱います。
と言ってもこのままではわかりにくいかもしれません。
各象限に分けて,例を見てみましょう。
第1象限の場合
点 [texP] が第1象限にある場合から考えます。
このときの図は先に述べた【定義の図】と同様です。
では,例えば のときを考えてみましょう。
まず【定義の図】において とした図をかきます。
図のいらない部分は省略しますね。
上の図の点 は,点 から 軸 に向かって引いた垂線と 軸との交点です。
ですから です。
は,次の三角形 と相似ですね。
二つの図を比較して, の各辺の長さを求めてみましょう。
【定義の図】において円の半径は としましたから, です。
と は相似で,その相似比は辺 と の比から です。
したがって, の辺の長さは次のようにわかります。
さて,【定義の図】の点 の座標を とするのでした。
この場合は です。
点 の 座標は , 座標は の長さそのものですね。
よって ,
さらに となります。
定義において円の半径を としていたのは
の長さがそのまま点 の 座標と 座標に対応してくれるからです。
また, は直線 の傾きに対応します。
例題1
(1) ,, の値をそれぞれ求めてください。
(2) ,, の値をそれぞれ求めてください。
例題1の解答
(1) ,,
(2) ,,
第2象限の場合
例えば, のときを考えてみましょう。
ここは をもとにして考えるとよいです。
【定義の図】をアレンジして次のような図をかきます。
点 , から 軸に向かって引いた垂線と 軸との交点をそれぞれ , とします。
この図において定義より,点 の座標が となりますから
これの具体的な値を求めることが目標です。
と は合同です。
よって対応する辺の長さが等しく,,また となります。
辺 の長さははまさに点 の 座標で
それは点 の 座標,すなわち辺 と等しいです。
点
点 ですから
とわかります。
同様にして,辺 の長さは辺 と等しいです。
ただし点 の 座標,すなわち点 の 座標は負であることに注意すると
となります。そして
となります。
またこの考え方は, のときに限らず
次のように一般化できます。
図のように点 , をとります。
点 と の座標を比較すると,これらの 座標は等しいので
がいえます。同様に 座標を比較すると
であることから符号が反転しているだけとわかるので
がいえます。さらにこの(1),(2)から
がいえます。
これは, がどのような実数値でも成り立ちます。
例題2
(1) ,, の値をそれぞれ求めてください。
(2) ,, の値をそれぞれ求めてください。
例題2の解答
(1) ,,
(2) ,,
第三象限の場合
ここからペースアップしていきましょう。
第三象限の角を考えるときは
第一象限の角 から だけ回転させた角を考えるとよいです。
上の図のように点 , をとります。
と は合同です。
すると ですから,点 と の 座標を比較すると
それらは符号が反転しているだけとわかるので
がいえます。
同様に ですから,点 と の 座標を比較すると
それらは符号が反転しているだけとわかるので
がいえます。そして(4),(5)から
がいえます。
これらは がどのような実数値でも成り立ちます。
三角関数のより具体的な値を考えるときは
式(4),(5),(6)を公式として適用するというよりは
図のほうを考えるとよいです。
たとえば の値を求めるときは
とした図を描きます。
例題3
(1) ,, の値をそれぞれ求めてください。
(2) ,, の値をそれぞれ求めてください。
例題3の解答
(1) ,,
(2) ,,
第四象限の場合
第四象限の角を考えるときは
第一象限の角 に対して の角を考えるとよいです。
上の図のように点 ,[tex;P'=(\cos (- \theta) , \sin ( - \theta))] をとります。
と は合同です。
すると ですから,点 と の 座標を比較すると
それらは符号が反転しているだけとわかるので
がいえます。また点 と の 座標は等しいので
がいえます。そして(7),(8)から
がいえます。
これら式(7),(8),(9)も, がどのような実数値でも成り立ちます。
またこの場合も,式(7),(8),(9)を公式として覚えて適用するよりは
図を考えることで,三角関数の具体的な値を求めるほうがよいです。
たとえば の値を考えるときは
と をもとにした図を考えるとよいです。
例題4
(1) ,, の値をそれぞれ求めてください。
(2) ,, の値をそれぞれ求めてください。
例題4の解答
(1) ,,
(2) ,,
特別な角の三角関数の値
最後に ( は整数) の角に対する三角関数の値を求めます。
要するに の倍数の角に対する三角関数の値です。
たとえば に対する三角関数の値は次のように考えます。
冒頭に述べた三角関数の定義を思い出してください。
原点を中心とする単位円周上の点 について
として点 とするのでした。
ならば次のような図を考えましょう。
点 の座標を考えてみてください。
点 は 軸上の点ですよね。さらに円の半径が であることに注意すると
です。
したがって
, となります。
また については
で,分母の値が になってしまうため値を定義できません。
したがって の値はありません。
( の値は という意味ではありません)
例題5
次の問題に答えてください。値が無いものは"なし"としてください。
(1) ,, の値をそれぞれ求めてください。
(2) ,, の値をそれぞれ求めてください。
(3) ,, の値をそれぞれ求めてください。
(4) ,, の値をそれぞれ求めてください。
(5) ,, の値をそれぞれ求めてください。
例題5の解答
(1) ,,
(2) ,,
(3) ,ですが の値は なし 。
(4) ,,
(5) ,,
(角 の動径は と同じ位置にあります)