ぬうがくブログ

数学っぽいことを気になったときに気になったように書き綴ります。たまに別の趣味と混ざります。

度数法と弧度法

 

はじめに

小学校でも習うように,角度は一周を 360^{\circ} として測ります。
これは度数法といって,最もよく知られている角度の測り方です。

一方で,より進んだ数学を学ぶとき
角度の表現には度数法ではなく弧度法と呼ばれる方法が一般的に使われます。

本記事では弧度法について,また弧度法と度数法の対応について説明します。

 


円周率の復習

ところで度数法において一周を 360^{\circ} とするのはなぜかというと
一説によれば,360 という数が 2,3,4,5,6,9,12,\cdots などの
多くの数で割り切ることができるので
都合の良い数として使われているそうです。

都合の良い…数学的にはだいぶ曖昧な理由で決められていたんですね。
いまさら広く知れ渡っている度数法に物申すわけでもないですが
例えば約数が多いだけなら,一周を 360^\circ ではなく
もっと大きな他の数にしても良かったはずですから。

 

さて一方で弧度法は,数学的にある重要な定数をもとに決められます。
それはずばり,円周率です。

円周率は,これも小学校で習いますが,そのときは多くの場合次のように教わります。
\begin{align}
\frac{円周}{直径} = 円周率 
\end{align}
これは,どんな円でも,円周の長さと直径の長さの比は常に等しくて
その値を円周率と呼ぶ,ということです。
そしてこの円周率を記号 \pi で表し,その値は \pi = 3.1415 \cdots のように
無限に続く小数で表されるのでした。

言い換えると
どんな円でも,円周の長さは常にその円の直径の 3.14くらい
ということです。

 

では,次でいよいよ弧度法について説明します。

 


 

本題 弧度法

扇形の中心角は,その弧の長さに比例するので
中心角と弧の長さの比で角度を測ります。

弧度法

半径 r の扇形の弧の長さを l,中心角を \theta とします。
このとき中心角 \theta
\theta = \displaystyle\frac{l}{r} (ラジアン)
と表します。
ラジアンとは弧度法の単位のようなものですが,多くの場合省略します。

 

といってもこれだけではわかりにくいと思うので
いくつかの具体的な角度の例で理解していきましょう。

 

(例1):\theta = 180^{\circ} のとき

半径 r,中心角 180^{\circ} の扇形,すなわち半円の弧の長さは
円周の半分であると考えれば (直径) \times \pi = (円周) より
2r \times \pi \times \displaystyle\frac{1}{2} = \pi r です。
したがって中心角は上記青枠の定義より 180^{\circ} = \displaystyle\frac{\pi r }{r} = \pi となります。
180^{\circ} の角は,弧度法の世界では \pi (ラジアン) と表します。

 

(例2):\theta = 360^{\circ} のとき

中心角 360^{\circ} の扇形とはすなわち円であるとみなします。 
(直径) \times \pi = (円周) より (円周) = 2 \pi r ですから
上記青枠の定義より 360^{\circ} = \displaystyle\frac{2 \pi r}{r} = 2 \pi となります。
360^{\circ} の角は,弧度法の世界では 2 \pi (ラジアン) と表します。
(以下,ラジアンは省略します)

実は,度数法と弧度法の違いは
一周を 360^{\circ} としたか,2 \pi (ラジアン)としたか
たったそれだけのことなのです。

 

他の角度は(例1),(例2)の180^{\circ} = \pi あるいは 360^{\circ} = 2 \pi をもとにして
次のように比例の考え方を利用すると楽です。

 

(例3):\theta = 90^{\circ} のとき
180^{\circ} = \pi より,各辺を 2 で割れば
90^{\circ} = \displaystyle\frac{1}{2} \pi となります。

(例4):\theta = 30^{\circ} のとき
180^{\circ} = \pi より,各辺を 6 で割って
30^{\circ} = \displaystyle\frac{1}{6} \pi となります。

(例5):\theta = -270^{\circ} のとき
90^{\circ} = \displaystyle\frac{1}{2} \pi より,両辺を -3 倍して

-270^{\circ} = - \displaystyle\frac{3}{2} \pi となります。

 

 

みなさんも考えてみましょう。

 

例題1

 次の角度を、度数法で表されたものは弧度法で、弧度法で表されたものは度数法に変換してください。

(1) 45^{\circ}

(2) -120^{\circ}

(3) 210^{\circ}

(4) \displaystyle\frac{2}{3} \pi

(5) - \displaystyle\frac{5}{4} \pi

(6) \displaystyle\frac{11}{6} \pi

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例題1の解答

(1) 45^{\circ} = \displaystyle\frac{1}{4} \pi

(2) -120^{\circ} = - \displaystyle\frac{2}{3} \pi

(3) 210^{\circ} = \displaystyle\frac{7}{6}

(4) \displaystyle\frac{2}{3} \pi = 120^{\circ}

(5) - \displaystyle\frac{5}{4} \pi = - 225^{\circ}

(6) \displaystyle\frac{11}{6} \pi = 330^{\circ}

 

わかりましたか?今度は数を少し難しくしてみましょう。
でも,同じように考えればわかるはずです。

 

例題2

 次の角度を、度数法で表されたものは弧度法で、弧度法で表されたものは度数法に変換してください。

(1) 18^{\circ}

(2) -40^{\circ}

(3) 420^{\circ}

(4) 1^{\circ}

(5) \displaystyle\frac{1}{7} \pi

(6) - \displaystyle\frac{5}{12} \pi

(7) \displaystyle\frac{7}{8} \pi

(8) \displaystyle\frac{11}{90} \pi

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例題2の解答

(1) 18^{\circ} = \displaystyle\frac{1}{10} \pi

(2) -40^{\circ} = - \displaystyle\frac{2}{9} \pi

(3) 420^{\circ} = \displaystyle\frac{7}{3} \pi

(4) 1^{\circ} = \displaystyle\frac{1}{180} \pi

(5) \displaystyle\frac{1}{5} \pi = 72^{\circ}

(6) - \displaystyle\frac{5}{12} \pi = - 75^{\circ}

(7) \displaystyle\frac{7}{15} \pi = 84^{\circ}

(8) \displaystyle\frac{11}{90} \pi = 22^{\circ}