三角関数の相互関係
本記事を読む前に,こちらの記事も合わせてお読みください。
高校数学において,次の2つの式は三角関数の相互関係と呼ばれています。
三角関数の相互関係
本記事では,これらの公式とこれらから派生して得られる公式について
またこれらの公式を使って解くことのできる問題について説明します。
公式の証明
まず,三角関数の定義について思い出しましょう。
直角三角形を使った三角関数の定義は
冒頭で紹介したページにもありますが次の通りです。
三角比(直角三角形による定義)
次の図のような の直角三角形 を考えます。
上の図において
とします。
また,定義のこれら3つの式は,それぞれ分母を払えば
,,
となります。
において三平方の定理より
\begin{align}
a^2 + b^2 &= c^2 \\
(c \cos \theta)^2 + (c \sin \theta)^2 &= c^2 \\
c^2 \cos^2 \theta + c^2 \sin^2 \theta &= c^2 \\
(両辺を c^2 で割 & って)\\
\sin^2 \theta + \cos^2 \theta &= 1
\end{align}
となり,式(1)が成り立ちます。
※ をそれぞれ と書きます。
続けて式(2)を証明します。
\begin{align}
\frac{\sin \theta}{\cos \theta} = \frac{b}{c} \div \frac{a}{c} = \frac{b}{a} = \tan \theta
\end{align}
となるので,式(2)が成り立ちます。
派生して得られる公式
式(1)の両辺を で割ると
\begin{align}
\sin ^2 \theta + \cos ^2 \theta &= 1\\
(両辺を \cos^2 \theta で割って)&\\
\frac{\sin^2 \theta}{\cos^2 \theta} + 1 &= \frac{1}{\cos^2 \theta}\\
(式(2)より \frac{\sin \theta}{\cos \theta}=\tan \theta なので)&\\
\tan^2 \theta + 1 &= \frac{1}{\cos^2 \theta} \tag{3}
\end{align}
上記のようにして式(3)を得ることができます。
今度は式(1)の両辺を で割ると
\begin{align}
\sin^2 \theta + \cos^2 \theta &= 1\\
(両辺を \sin^2 \theta で割って)& \\
1 + \frac{\cos^2 \theta}{\sin^2 \theta} &= \frac{1}{\sin^2 \theta}\\
(式(2)より \frac{\cos \theta}{\sin \theta}=\frac{1}{\tan \theta} なので)& \\
1 + \frac{1}{\tan^2 \theta} &= \frac{1}{\sin^2 \theta} \tag{4}
\end{align}
となり,式(4)を得ることができました。
登場した式を並べて書いておきましょう。
三角関数の相互関係と派生して得られる公式
注意すべきこと
こういうとき,つい上記の公式を覚えようとしてしまいがちですが
三角関数は特に公式が多く,全部をただ覚えようとすると頭がパンクしてしまいます。
覚えるべき公式ももちろんありますが,その数はなるべく少なくし
それ以外は,必要ならば簡単に導出できるくらいにしておくのがベストです。
例えば私なら,上記の4つの公式であれば
式(1),(2)はあまりに基本的で,覚えていないとまずいレベルだと思いますが
式(3)に関しては
・確か と が登場する式があったな
・式(1)と(2)から導出できる
・式(1)の両辺を で割れば良い
という見た目や,導出のためのとっかかりを覚えておくに留めておきます。
式(4)に至っては,実は式(1)~(3)があれば事足りるので
式(4)がどうしても必要になる場面は…あまりないと思います。
紹介しておいてごめんなさい。
さて,そういうわけで
皆さんにはこのことの練習として次の問題を出しましょう。
問題1
これら(1),(2)の公式を利用して,次の式(3),(4)を導出してください。
問題例
例題1
のとき, の値を求めてください。
例題1の解答
式(1) に を代入すると
\begin{align}
\left( \frac{1}{4} \right) ^2 + \cos^2 \theta &= 1 \\
\frac{1}{16} + \cos^2 \theta &= 1\\
\cos^2 \theta &= 1 - \frac{1}{16}\\
\cos^2 \theta &= \frac{15}{16}\\
\cos \theta &= \pm \frac{\sqrt{15}}{4}
\end{align}
となります。
例題1で注意しなければならないのは
式の下から2行目までの部分で から の値を求めるときに
の符号が正と負のどちらの場合もあることを考慮しなければならない点です。
冒頭で紹介した記事の,単位円による三角関数の定義を思い出してください。
原点中心の半径1の円の,円周上の点 の座標を とするのでした。
そうすると次の図のように (すなわち点 の 座標が ) のとき
は第1象限または第2象限の角になりますから の符号は
が第1象限の角ならば正, が第2象限の角ならば負となります。
例題1の場合, でしたから
が正の場合と負の場合,どちらもアリになります。
したがって,正と負両方の場合を答えなければなりません。
(上の例題1の解答ではまとめて と書きました。)
例題2
のとき, の値を求めてください。
例題2の解答①
例題2の結果から なので
式(2) より
ならば
\begin{align}
\tan \theta = \frac{\sin \theta}{\cos \theta} = \frac{ ( \frac{1}{4} ) }{ ( \frac{\sqrt{15}}{4} )} = \frac{1}{\sqrt{15}}
\end{align}
ならば
\begin{align}
\tan \theta = \frac{\sin \theta}{\cos \theta} = \frac{ ( \frac{1}{4} ) }{ ( - \frac{\sqrt{15}}{4} )} = - \frac{1}{\sqrt{15}}
\end{align}
となります。
結局 です。
このように の値がわかれば や の値も
件の公式により芋づる式に求めることができます。
始めに与えられた値が のみ,あるいは のみの場合でも
同様にして求めることができます。
ところで,例題2について,次のように解くこともできます。
例題2の解答②
式(4) に を代入して
\begin{align}
1 + \frac{1}{\tan^2 \theta} &= \frac{1}{\sin^2 \theta}\\
1 + \frac{1}{\tan^2 \theta} &= \frac{1}{ (\frac{1}{16}) }\\
1 + \frac{1}{\tan^2 \theta} &= 16\\
\frac{1}{\tan^2 \theta} &= 15\\
\tan^2 \theta &= \frac{1}{15}\\
\tan \theta &= \pm \frac{1}{\sqrt{15}}
\end{align}
となります。
せっかくなので式(4)を利用して を経由せずに解いてみました。
ここでも例題1のように, の符号を考慮するのを
忘れないようにしましょう。
ですから の符号は
が第1象限の角のときは正、 が第2象限の角のときは負となり
正と負どちらの場合もあります。
例題3
のとき, の値を求めてください。
例題3の解答
与えられた式 の両辺を乗すると
\begin{align}
(\sin \theta + \cos \theta)^2 &= \left( \frac{3}{5} \right) ^2 \\
\sin^2 \theta + 2 \sin \theta \cos \theta + \cos^2 \theta &= \frac{9}{25} \\
(\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1 なので) & \\
1+2 \sin \theta \cos \theta &= \frac{9}{25} \\
2 \sin \theta \cos \theta &= - \frac{16}{25} \\
\sin \theta \cos \theta &= - \frac{8}{25}
\end{align}
となります。
これは高校数学において定番の問題です。
(例えばここから更にいろいろな式の値を求める問題が続きます。)
普通,2数の和からその2数の積を求めることは,他に条件が無ければ難しいですが
その2数が と なら話は別です。
式(1) を覚えていることと
を2乗すれば と が現れる点に気づける(知っている)ことが重要です。
みなさんも解いてみましょう。
問題2
(1) のとき,, の値を求めてください。
(2) のとき,, の値を求めてください。
(3) のとき,, の値を求めてください。
(4) のとき,次の式の値を求めてください。
(ア)
(イ)
問題2の解答
(1) ,
(2) ,
(3) , または ,
(4)
(ア)
(イ)
(4)の詳細
(ア)について
\begin{align}
( \sin \theta + \cos \theta )^2 &=\left( \frac{5}{6} \right)^2 \\
1+2\sin \theta \cos \theta &= \frac{25}{36} \\
2\sin \theta \cos \theta &= - \frac{11}{36} \\
\sin \theta \cos \theta &= - \frac{11}{72}
\end{align}
(イ)について
\begin{align}
\frac{1}{\cos \theta} + \frac{1}{\sin \theta} &= \frac{\sin \theta}{\sin \theta \cos \theta} + \frac{\cos \theta}{\sin \theta \cos \theta} \\
&= \frac{\sin \theta + \cos \theta}{\sin \theta \cos \theta} \\
((ア)の結果より \sin \theta \cos \theta &= - \frac{11}{72} だから) & \\
&= \frac{\left( \frac{5}{6} \right)}{\left( - \frac{11}{72} \right) } \\
&=- \frac{5}{6} \times \frac{72}{11} \\
&= - \frac{60}{11}
\end{align}