ぬうがくブログ

数学っぽいことを気になったときに気になったように書き綴ります。たまに別の趣味と混ざります。

「相加平均と相乗平均の大小関係」と最大値・最小値を求める問題への応用1

相加平均と相乗平均の大小関係

a \gt 0,b \gt 0 とします。このとき次の不等式が成り立ちます。

\begin{align}
\frac{a+b}{2} \geqq \sqrt{ab}
\end{align}

また等号成立条件,つまり \displaystyle\frac{a+b}{2} = \sqrt{ab} となるのは a=b のときです。 

 

不等式の左辺 \displaystyle\frac{a+b}{2}2a,b の相加平均です。
相加平均は n 個の値の合計を個数 n で割ることで求める,小学校でも習う
いわゆる「平均」です。
一方で不等式の右辺 \sqrt{ab}2a,b の相乗平均です。

相乗平均が何であるとか,件の不等式の証明はいずれ別に記事を作ることにして
本記事では,高校における数学Ⅱのよく見る問題である
この関係を利用する問題について解説します。

 


 

例題1

x \gt 0 とします。このとき次の不等式が成り立つことを証明してください。

\begin{align}
x+\frac{1}{x} \geqq 2
\end{align}

 

例題1の解答

(左辺)-(右辺) \geqq 0 を示せば良いです。
\begin{align}
&  x+\frac{1}{x}-2\\
&=\frac{x^2}{x}+\frac{1}{x}-\frac{2x}{x}\\
&=\frac{x^{2}-2x+1}{x}\\
&=\frac{(x-1)^2}{x}\\
\end{align}

分子について (x-1)^2 \geqq 0,分母については与えられた条件から x \gt 0 なので
\displaystyle\frac{(x-1)^2}{x} \geqq 0 です。

(左辺)-(右辺) \geqq 0 を示せたので x+\displaystyle\frac{1}{x}-2 \geqq 0
すなわち x+\displaystyle\frac{1}{x} \geqq 2 が成り立ちます。

 

不等式 A \geqq B を示すために A-B \geqq 0 を示すのはよくある手法です。
しかしこの問題なら,相加平均と相乗平均の大小関係を利用して示すこともできます。
ただし,簡略のため件の不等式 \displaystyle\frac{a+b}{2} \geqq \sqrt{ab} そのままではなく
これの両辺に 2 をかけた a+b \geqq 2\sqrt{ab} を使います。

例題1の解答(別解)

x \gt 0 なので \displaystyle\frac{1}{x} \gt 0 です。(定理が成り立つ条件を確認)
相加平均と相乗平均の大小関係により
\begin{align}
x+\frac{1}{x} &\geqq 2 \sqrt{x \cdot \frac{1}{x}}\\
x+\frac{1}{x} &\geqq 2
\end{align}
が成り立ちます。

 

こうすると,解答がだいぶ短くまとまりました。
不等式 a+b \geqq 2\sqrt{ab} において
a=x,b=\displaystyle\frac{1}{x} とした姿であることに注意してください。
ルートの中身が,約分されて定数になる点がミソです。
また1行目のように,定理が成り立つ条件を満たしているかを確認することは
とても重要です。


 

それでは,次にこちらの問題を考えてみましょう。 

例題2

x \gt 0 とします。このとき,式 x+\displaystyle\frac{4}{x} の最小値を求めてください。

 

 

例題2の解答

x \gt 0 なので \displaystyle\frac{4}{x} \gt 0 です。(定理が成り立つ条件を確認)
相加平均と相乗平均の大小関係により
\begin{align}
x+\frac{4}{x} &\geqq 2 \sqrt{x \cdot \frac{4}{x}}\\
x+\frac{4}{x} &\geqq 4
\end{align}
が成り立ちます。

また等号成立条件は x=\displaystyle\frac{4}{x} のときですから,この方程式を解くと
\begin{align}
x&=\frac{4}{x}\\
x^{2}&=4\\
x &\gt 0 だから\\
x&=2
\end{align}
となります。確かに x=2 を代入してみると
\begin{align}
x+\frac{4}{x}=2+\frac{4}{2}=4
\end{align}
となります。
したがって,x \gt 0 のとき x+\displaystyle\frac{4}{x} の最小値は 4 です。

 

例題2について解説します。

例題2では,例題1と違い等号成立条件を確認しています。
x+\displaystyle\frac{4}{x} \geqq 4 を示すだけでは,その最小値が 4 であることは言えないからです。
(この情報だけでは,もしかしたら x+\displaystyle\frac{4}{x} の最小値は5かもしれません)

x+\displaystyle\frac{4}{x} \geqq 4 であることと,式 x+\displaystyle\frac{4}{x}4 という値を取りうることを示して
はじめて x+\displaystyle\frac{4}{x} (ただし x \gt 0 ) の最小値は 4 であると言うことができます。
例題2では, x+\displaystyle\frac{4}{x}=4 となる x の値を直接示すことで
このことを保証しています。

以上のように,相加平均と相乗平均の大小関係を利用するときは
定理が成り立つ条件が満たされているか
問題によって,等号成立条件を確認する必要があるか
などの点に注意しましょう。