ぬうがくブログ

数学っぽいことを気になったときに気になったように書き綴ります。たまに別の趣味と混ざります。

絶対値記号を含む方程式

本記事は,先にこちらの記事を読んでおくことをおすすめします。

shibiremath.hatenablog.com


 

例題1

次の x についての方程式を解いてください。

|x+3|=5

 

「絶対値」が何を意味するのかを考えれば,すぐにわかります。
この式は, x+3 という数の絶対値は 5 である,ととらえることができます。
そうすると, x+3 の値は 5-5 のいずれかです。
したがって, x+3=5 だとすれば x=2 ですし
また, x+3=-5 だとすれば x=-8 です。

 

例題1の解答

x=2 または x=-8

 

続けて,次の問題です。

 

例題2

次の x についての方程式を解いてください。

|x+3|=|x-5|

 

一般に,|x-\alpha| といえば
数直線上における x\alpha に対応する2点の距離ですから
与えられた式について

\begin{align}
|x+3|&=|x-5|\\
|x-(-3)|&=|x-5|
\end{align}

と変形することによって,この等式は
x-3 の距離」と「x5 の距離」が等しい。
つまり,x-35 の双方からの距離が等しい値ととらえることができます。

f:id:shibiremath:20210516005401p:plain
ということは,x-35 のちょうど真ん中にある数ですから x=1  です。
これをもとの式に代入すれば

\begin{align}
|1+3|&=|1-5|\\
|4|&=|-4|\\
4&=4
\end{align}

となり,確かに x=1 は方程式の解とわかります。

 

例題2の解答

x=1

 

では,次のような問題ではどうでしょうか。

 

例題3

次の x についての方程式を解いてください。

2x+|x+3|=|x-5|

 

 

このような問題だと例題1,2のように意味を考えて解くのはやや難しいので
定義に従って処理するのが良いでしょう。

絶対値の定義から,0 以上の数の絶対値はその数自身
負の数の絶対値はその数に -1 をかけたものになるので
絶対値の記号で囲まれた数が,0 以上かそうでないかで場合分けしましょう。

この場合,x+3x-5 のそれぞれについて
0 以上の値をとるか否かを考える必要があります。
よって,場合分けは多くて次の4通りになります。

ケース1 x+3 \geqq 0 かつ x-5 \geqq 0
ケース2 x+3 \geqq 0 かつ x-5 \lt 0
ケース3 x+3 \lt 0 かつ x-5 \geqq 0
ケース4 x+3 \lt 0 かつ x-5 \lt 0

しかしながら,x+3 よりも x-5 のほうが大きいことはあり得ないので
ケース3は無くなり,場合分けは次の3通りで済みます。

ケース1 x+3 \geqq 0 かつ x-5 \geqq 0
ケース2 x+3 \geqq 0 かつ x-5 \lt 0
ケース* x+3 \lt 0 かつ x-5 \geqq 0
ケース3 x+3 \lt 0 かつ x-5 \lt 0

いよいよ,それぞれの場合について考えていきましょう。

 

(ケース1)  x+3 \geqq 0 かつ x-5 \geqq 0 のとき (つまり x \geqq 5 のとき)

x+3x-5 はいずれも 0 以上の数ですから,次のように変形すれば良いです。

\begin{align}
2x+|x+3|&=|x-5|\\
2x+x+3&=x-5\\
2x&=-8\\
x&=-4\\
\end{align}

となりますが,x \geqq 5 である前提ですから,x=-4 は解として適しません。
実際,x=-4 を代入してみると
\begin{align}
2\times(-4)+|-4+3|&=|-4-5|\\
-8+|-1|&=|-9|\\
-7&=9\\
\end{align}

となり,確かに x=-4 は解ではありません。
よってこの場合は解なしとなります。

 

(ケース2)  x+3 \geqq 0 かつ x-5 \lt 0 のとき (つまり -3 \leqq x \lt 5 のとき)

\begin{align}
2x+|x+3|&=|x-5|\\
2x+x+3&=-(x-5)\\
4x&=2\\
x&=\frac{1}{2}\\
\end{align}

-3 \leqq \displaystyle\frac{1}{2} \lt 5 ですから, x=\displaystyle\frac{1}{2} は方程式の解です。
代入して確かめてみると

\begin{align}
2\times\frac{1}{2}+\left|\frac{1}{2}+3\right|&=\left|\frac{1}{2}-5\right|\\
1+\left|\frac{7}{2}\right|&=\left|-\frac{9}{2}\right|\\
\frac{9}{2}&=\frac{9}{2}\\
\end{align}

となり,確かに成り立ちます。

 

(ケース3)  x+3 \lt 0 かつ x-5 \lt 0 (つまり x \lt -3 のとき)

\begin{align}
2x+|x+3|&=|x-5|\\
2x-(x+3)&=-(x-5)\\
2x-x-3&=-x+5\\
2x&=8\\
x&=4\\
\end{align}

となりますが,x \lt -3 である前提ですから,x=4 は解として適しません。
実際,x=4 を代入してみると

\begin{align}
2\times 4+|4+3|&=|4-5|\\
8+|7|&=|-1|\\
15&=1\\
\end{align}

となり,確かに x=4 は方程式の解ではありません。
よってこの場合は解なしとなります。

以上(ケース1)~(ケース3)より
方程式の解は x=\displaystyle\frac{1}{2} です。

例題3の解答

x=\displaystyle\frac{1}{2}