ぬうがくブログ

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「相加平均と相乗平均の大小関係」の証明 2通り


証明したい内容は,次の通りです。

 

相加平均と相乗平均の大小関係

a \gt 0,b \gt 0 とします。このとき次の不等式が成り立ちます。

\begin{align}
\frac{a+b}{2} \geqq \sqrt{ab}
\end{align}

また等号成立条件,つまり \displaystyle\frac{a+b}{2} = \sqrt{ab} となるのは a=b のときです。 

 

本記事では(2数のときの)相加平均と相乗平均の大小関係の証明を
2通り紹介します。


 

まずは,数式のみを使った単純な手法から。
A \geqq B を示すために,A-B \geqq 0 を示します。

証明1

\begin{align}
(左辺)-(右辺)&=\frac{a+b}{2}-\sqrt{ab}\\
&=\frac{a+b}{2}-\frac{2\sqrt{ab}}{2}\\
&=\frac{a-2\sqrt{ab}+b}{2}\\
&=\frac{(\sqrt{a}-\sqrt{b})^2}{2} \geqq 0
\end{align}
となるので,\displaystyle\frac{a+b}{2} \geqq \sqrt{ab} がいえます。

また等号が成立するのは,\displaystyle\frac{(\sqrt{a}-\sqrt{b})^2}{2}=0 となるときです。

\begin{align}
\frac{(\sqrt{a}-\sqrt{b})^2}{2}&=0\\
(\sqrt{a}-\sqrt{b})&=0\\
\sqrt{a}&=\sqrt{b}\\
a&=b
\end{align}

上の計算より,a=b のとき,等号が成立します。

 

このように,不等式そのものと,等号が成り立つことを
基本的な式変形によって簡単に示すことができます。

次に,図形を用いた証明方法を紹介します。

 

証明2(図形を用いた証明)

次のような図を考えます。
Oを中心とする円があり,直径の両端をABとします。
円周上の任意の位置に点Pをとり,点Pから線分ABへの垂線と線分ABとの交点をHとします。
また,円周上に点CCO \perp ABとなるようにとります。

f:id:shibiremath:20210621020402p:plain

ここでAH=aBH=b とおくと,CO=\displaystyle\frac{a+b}{2}PH=\sqrt{ab} となります。
このことを説明します。

まず,線分 CO は円の半径ですから,

CO=\displaystyle\frac{a+b}{2} \tag{1}
がいえます。これはちょうど2数 a,b の相加平均です。

次に,\bigtriangleup PAB について三平方の定理より

AB^2 = PA^2 + PB^2 \tag{2}
が成り立ちます。
更に\bigtriangleup PAH\bigtriangleup PBH について,それぞれ三平方の定理より

PA^2 = PH^2 + AH^2 \tag{3}
PB^2 = PH^2 + BH^2 \tag{4}
が成り立ちます。
式(2)に式(3),(4)を代入して

AB^2=(PH^2 + AH^2) + (PH^2 + BH^2)
を得ます。
AB=a+bAH=aBH=bPH \gt 0 に注意すればこの式は
\begin{align}
(a+b)^2 &= (PH^2 + a^2) + (PH^2 + b^2)\\
a^2 + 2ab + b^2 &= 2PH^2 + a^2 + b^2\\
2PH^2 &= 2ab\\
PH^2 &= ab\\
PH &= \sqrt{ab} \tag{5}
\end{align}
となります。これはちょうど2数 a,b の相乗平均です。

さて,式(1),(5)を比較します。
線分PHは線分COより長くなることはありません。
したがって CO \geqq PH,すなわち\displaystyle\frac{a+b}{2} \geqq \sqrt{ab} がいえます。

またCO=PHとなるのは点Pが点Cと重なるときで
このとき点Hは点Oと重なりますからAH=BHとなります。
言いかえれば,\displaystyle\frac{a+b}{2} = \sqrt{ab} が成り立つのは a=b のとき
となります。

 


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